星野塾


                                                        



 「補習の時間」ができたので、近況ネタやヨタ話はそっちにまかせればいいんですが、真面目な話だけの講座にすると、
このコーナー、みんなスルーするだけで誰も読んでくれないよなぁ、きっと(泣)。

 気を取り直して本題。
 今回お話しするプラスチックはこれまでにお話したモノ、すなわち熱可塑性プラスチックとは決定的に違う点がありま
す。それは、2つの原料を混ぜることで化学反応を起こし硬化して樹脂となり、一度硬化してしまうと元には戻らないと
いう性質を持つことです。これを熱硬化性プラスチックといいます。熱硬化性プラスチックに分類されるものの中には、
固体のプラスチックの状態で熱を加えて溶かすとそのときに熱によって化学変化を起こし、溶かす前よりも硬いプラスチ
ックに変化して硬化、再び加熱しても元には戻らない、というものもありますが、我々が模型の世界でお目にかかる熱硬
化性プラスチックは大抵が2つを混ぜて硬化させるタイプです。

○ポリウレタン(略号PUR。)
 通称キャスト。これは模型に使われる注型用のポリウレタン樹脂の商品名が通称になったものです。ですから、我々は
キャストといえばポリウレタン樹脂を思い浮かべますが、ポリウレタンがこの呼び方で通じるのは、たぶん模型などのホ
ビーの世界だけではナイかと…。(もともと「キャスト」とは「鋳造する」、すなわち型に原材料を流し込んで固めるこ
とで部材をつくるという意味。ちなみに「レジン」とは「樹脂」のコト。)ポリウレタンがこのように使われるのは限ら
れた分野においてのみで、世の中では別の用途、例えば発泡させたものは緩衝材や断熱材に使用されています。また、熱
可塑性のもっと柔らかいものもあり、ゴムのような弾性体材料として身の回りのあらゆるところで使われています。ポリ
ウレタンで作られている衣類もたくさんありますが、我々の知っている「キャスト=ポリウレタン」とはあまりにもイメー
ジが違いますからちょっと気がつかないかもしれませんね。

 さて、注型用のポリウレタンですが、自分で製作したパーツを複製したいときにはシリコーンでパーツを型取りして、
その型にA液とB液を同じ重量だけとって混ぜたものを流し込む。しばらくすると固まって型から外して複製品のできあ
がり、という使い方はいまさら説明しなくてもよいでしょう。2つの液を混ぜるときの混合比率が1:1とわかりやすく
硬化も早い。硬化したものは適度な硬さで切削加工性も良く、瞬間接着剤やエポキシ接着剤が効き、塗料や下地材はプラ
モ用が流用可能という使い勝手の良さから瞬く間に模型用注型材の主流となりました。今や樹脂系材料のガレージキット
はほとんどがコレでできている、と言ってもいいのでは?

 自分で注型作業をするときの注意点を少々。硬化するときに発生するガスは体に良くないそうですから、換気を良くし
ましょう。また、液や硬化後の樹脂を加工したときの削りカスが皮膚に触れると、人によってはカユくなったりカブれた
りすることがありますから気をつけてください。私は高校生のとき、誤って混合前の液を股間にこぼしてしまい、股の内
側がジンマシンだらけになったコトがあります。今、思い出してもカユいです。


○エポキシ樹脂(略号EP。)
 物理的強度が高い、耐熱性が良い、耐薬品性が良い、接着性が良い、肉ヤセしない……。どうやら相当に優秀な性能を
持った樹脂のようです。軽量高強度のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)で繊維を固めるのにも使われたりします。
英国の某スポーツカーのアルミフレームは溶接ではなく、エポキシ系接着剤で組み立てられているそうです。理由は「溶
接よりもはるかに高い強度を得られるから」だとか……。

 模型用ではまず頭に浮かぶのがエポキシパテでしょう。2種類の材料を混ぜると化学反応により硬化。固まるまでは
「粘土」そのものなので、さまざまな形を作り出すことができますし、ヘラでモールドを入れることもできます。それこ
そ困るくらい数多くの製品が出ていますが、割と一人ひとりの好みで「お気に入り」が分かれる製品かもしれません。少
なくとも「模型用」と書かれたものは作業可能時間や硬化時間、硬化後の加工性などが模型製作に適したモノになるよう
に調整されているはずですから、初めて使うヒトはまずその中から選ぶのが良いかと。また、開封後、混ぜない状態で放
置しておくと、意外と早く劣化しますから、「ワタシの模型ライフはこれがナイと成立しません!」なんてヒト以外は、
とりあえずは容量の少ないものをお勧めします。

 次にエポキシ接着剤。A剤、B剤を等量混ぜたものを使用します。硬化までの時間はその製品によって異なりますが、
同じ接着剤でも作業時の気温が高いと硬化時間が短く、気温が低いと長くなります。私は5分硬化型を、プラスチック以
外の小さな部品を接着する場合などに使っています。また、部品をより強力に接着しておきたいときにも使用します。一
例を挙げますと、ジョイントの受け穴に使うパイプをボディに接着するときなどはボディパーツにパイプを通し、ボディ
パーツの裏側の見えない部分にエポキシ接着剤をたっぷりつけて固定する、といった使い方をしています。もうひとつ、
知っておくとよいのは、例えば5分硬化型のエポキシ接着剤の場合、5分くらいで部品が接着します。ただし、この時点
ではまだ接着剤本来の接着力は発生していません。固まってはいますが、まだ接着力も樹脂自体も弱い状態なのです。で
すからしっかりと接着させるためには5分硬化型、と書いてあっても実際にはもっと時間が必要だということです。(完
全接着硬化までの時間の目安は接着剤の説明書をご覧ください。)また、逆にこれを利用して、部品を付けたときに接着
剤がちょっとハミ出しても、固まってからつまようじの先でハミ出た接着剤だけをこそぎ落とすことができます。しかも
うまくやると部品自体は全く無傷。5分経って部品が付いたな、という時点ではまだちょっと柔らかくペトペトするので、
さらに5〜10分くらい経ったタイミングでこの作業を上手に行なうと、余分な接着剤はボロボロ崩れるように取れてく
れます。

 透明なエポキシ樹脂は模型用注型材料としても使用されます。混合比率は異なりますが使い方は注型用ポリウレタンと
同じです。硬化までにはかなり時間がかかりますが、この時間の間に気泡が抜けていってくれるのであまり文句は言えま
せん。混合比率の許容誤差はポリウレタンよりも狭いようですから、うっかりすると硬化不良に陥りやすいです。私はポ
リウレタン注型のときは自分が持っているバネはかりを使って重量を量りますが、透明エポキシのときは台所からこっそ
りデジタルはかりを借りてきて(モチロン、ラップなどで包んで汚れないようにして、ですが)できるだけ正確に重量を
量っています。

○不飽和ポリエステル樹脂(略号UP。)
 身の回りでは、浴槽や浄化槽、それから小型船の船体などに使われています。すなわちFRP(繊維強化プラスチック)
のプラスチックの部分はこの材質。昔はR/CカーのシャーシはみんなFRPだったよなぁ……でうなずいてくれるヒト
はもうかなりのオジサンですね(笑)。

 プラモ用ではポリパテ(ポリエステルパテ)です。不飽和ポリエステル樹脂にタルク(滑石という柔らかい鉱物)の粉
を混ぜて粘度を上げたもので、主剤に硬化剤を少量混ぜると硬化します。スクラッチパーツや、ガレージキットの原型を
コレで作る(正確にはこれが硬化したカタマリから削りだして作る)ヒトも多いです。食いつきはあまり良くなかったり
もしますので、プラモのパーツにポリパテを盛るときは、盛る面をあらかじめ耐水ペーパーで少し荒らしておいたほうが
いいかもしれません。パーツから剥がれてきたときは瞬間接着剤で接着できます。もともとポリパテは自動車板金用とし
て使われているものですから、実は金属との相性がいいってご存知でしたか?模型店に無いときは自動車用品店でも入手
できます。また、工業用のラッカーシンナーを混ぜて粘度を落としたり、瞬間接着剤を微量混ぜて硬化を早めたりという
ワザもありますが、これらはパテの樹脂の性能を落としますからそのつもりで。(粘度調整はポリパテ専用の添加剤の使
用が無難かと思います。)

 それからポリパテで気になるコトがひとつ。タルクに発ガン性があるのではないか?という説があるそうです。タルク
は化粧品やベビーパウダーにも使われていますから、もし本当ならえらいコトです。ただ、ひとつ言えるのは、発ガン性
があろうが無かろうが、天然素材だろうが化学合成品だろうが、細かな粉末が一度に大量に肺に入ればそれだけで肺に害
を及ぼすのは医学的に間違いない、ということです。ポリパテは削ると細かい粉が出ますから、マスクをする、削り粉は
マメに掃除する、といった対策はしておいたほうがよいでしょう。…そーいえば今回取り上げた樹脂はみんなニオイがキ
ツいし、どれもカラダに悪そうなものばかりだよなぁ。説明書をよく読んで注意して使用しましょう。これ、メンドーな
のでやらないヒトもいるかと思いますが、買ってきた製品を安全に使うためには実はすごく大事なコトだったりします。

 以上、星野のひとでした。
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