星野塾



 えー、ホビーマガジン誌で8月末開設、と告知したのが9月1日にズレ込み、検索登録手続きのタイムラグを計算しな
かったもんだから、しばらくは検索不能(泣)。店名からの検索でたどり着けなかった人、けっこういるんだろうなぁ。
ほんとうに申し訳ありませんでした。ちゃんとオープンしてます。現在は店名からの検索も大丈夫です。大丈夫だよね?
……ホントに大丈夫かオイ?佐トちゃん!

 今回はとりあえず「塾」らしいことをやってみましょう。前回ちょっと書いた「模型に使用されるプラスチックの種類
とその特性」。別に知ってなくてもプラモ作るのになんら支障は無いコト、なんですけどね。でも、知ってるとどこかで
役立つことはあるかもしれません。なお、カッコ内の略号はISO(国際標準化機構)によるもの。JIS(日本工業規
格)の略号と共通で、私達の身の周りでもこの略号は使われています。最近のプラモはこれがランナーに刻印されていた
り、箱や説明書に明記されていたりするので、どのパーツが何の材質なのか判別することができます。

○ポリスチレン(略号PS。スチロール樹脂ともいわれる。)
 フツー、プラモはナニでできていますか?と言われればコレです。そこそこ丈夫で加工性に優れ、接着や塗装ができ、
金型による射出成型で大量生産が可能。この「そこそこ丈夫」なのがポイントで、あまり弱いとすぐにこわれてしまうし、
丈夫すぎると自分で切ったり削ったりの加工ができません。また、接着や塗装が容易であるからキットを自分で思い通り
にカスタマイズすることができます。大量生産向きであるからこそ、私たちはお小遣い程度の出費でプラモを買うことが
できます。まさにこの材料のこの性質あってのプラモ、なのですね。

 PSは射出成型時の成分の配合によって、その物性を調整することができます。同じPSでもメーカーによって材質の
感じが異なったり、ひとつのキットのなかでも成型色の違いや部品の用途によって硬いPSと柔らかいPSがあったりす
るのはこのためです。柔らかいものは、丈夫ですがペーパーがけするとネバつく感じがすることがあるとか、硬い感じの
ものや透明度の高いものはヒビが入りやすかったり割れやすかったりするのでランナーから切り離すときには注意が必要
であることは知っておいてよいかも。年季の入ったスケールモデラーさんなどは、ランナーの材質の感じだけでどこのメ
ーカーのキットか当ててしまうそうです。

 PSは熱可塑性プラスチックです。要は熱に弱く、熱を加えるとフニャッと変形してしまうということなのですが、熱
可塑性プラスチックは熱を加えた後で冷やすとまた硬くなり、しかも材料の性質が変化しません。熱してドロドロに溶か
した状態で金型に圧力をかけて注入、冷えて固まれば部品(プラモならランナー)のできあがり、という射出成型にはピ
ッタリの性質です。個人の工作レベルでいえば、火であぶって延ばしランナーを作れるのも、ヒ−トプレスやバキューム
フォームができるのもこの性質によるものです。一方、同じ理由から、プラモは温度の上がるところには置いておかない
こと。気がついたら可変機能がないのに「変形」してました、なんてことのないように(笑…でなくて、泣、ですね、こ
のバアイは)。それに、一度火が付いてしまえばよく燃えますから、加工に火を使う場合は十分に注意することは言うま
でもありません。

 もうひとつ、溶剤(シンナー)に弱い、というのも特徴です。実はプラモ用(=スチロール樹脂用)接着剤は、この性
質を利用したものです。PSを溶剤で溶かしてくっつけ、溶剤分が蒸発すると固まって取れなくなる、というワケです。
いわゆる模型用(スチロール樹脂用)の塗料の場合は、PSを溶かさない溶剤を使っていますから、色を塗ったらプラが
溶けて表面がザラザラになってしまった!というようなことはありません。ただし、いくら模型用シンナーといってもパ
ーツをジャブジャブ洗ったりすればPSは劣化します。ロボットの関節にエナメルシンナーで薄めたエナメル系塗料でス
ミ入れをしたら、プラパーツが割れてしまった!というのはありがちなトラブルですが、これはポリキャップ等を圧入し
たりしてプラスチック自体に力(ストレス)がかかっている部分や、力を加えて加工した部分、例えば曲げたり、ピンバ
イスで穴を開けたりした部分などに溶剤、または溶剤分の多い塗料を接触させることで起こります。(「ソルベントクラッ
キング」という現象であると思われます。)細いパーツや、肉厚が薄い部分もすでに射出成型時に力がかかっていますか
ら要注意。必ず起こる、ワケではありませんが、起こる可能性は常にありますから、気をつけましょう。

○ABS樹脂(略号ABS。アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、の略)
 これもPSと同じ熱可塑性プラスチックで、やはり成分の配合によって物性が異なります。もともと、耐衝撃性のある
PSが作れないか?というところから開発されたそうですから、PSよりも丈夫な樹脂です。昔はモデルガンなどには使
用されるものの、プラモの材質としては一般的ではありませんでしたが、最近のプラモの部品では太さや肉厚がとれない
が強度は欲しい、なんてところによく使われるようになりました。ロボットの関節とか、ジョイントとか、F1のサスペ
ンションアームなんかもそうかな?ただし、丈夫とはいっても、やはりフツーのプラスチックなので過信は禁物ですが。
対象年齢の低いトイ的要素の濃いキットは、手荒く扱われることを考慮して、ボディパーツもABSで成型されてたりし
ます。

 加工は、PSよりはちょっとメンドーな場合が多いです。(プラモのメーカーや成型色などによって差があります。)具
体的にはなんとなくネバッこくて切りづらい、削りづらい感じがしたり、ミョーに硬くて削っているとナイフの刃が切れ
なくなるのが早かったり、ペーパーを掛けてもなかなか削れなかったり、ピシッと平らな面を出すのが大変だったり、し
ます。それでも身構えて工作するほど大変なわけではありませんので、臆することはありませんが。また、ABSは切っ
たり削ったりすると独特のニオイがします。(成分の配合によってはほとんどわからない場合もあるようですけど。)うま
くコトバでは表現しにくいニオイなのですが、あまりいいニオイでないことは確かです。人によっては加工性よりこちら
のほうが問題ということもあるかもしれません。

 接着は、普通の模型用(=スチロール樹脂用)接着剤では接着しません。ABS専用接着剤を使ってください……と模
型講座などには大抵そう書いてあります。そのとおりなのですが、私の経験では、ABSは瞬間接着剤との相性が良いよ
うに思います。塗装についてはPSと同じと思ってもらえば作業上問題ないでしょう、と書こうと思ったのですが、模型
用ラッカー系塗料で割れが発生する事例があった、というハナシを耳にしました。気になったので、知り合いのプロモデ
ラーさん何人かに聞いてみたのですが、皆さん「普通に塗装していて割れたことはありません。」とのこと。私自身も、
サーフェイサー吹きを含め、模型用ラッカー系塗料で塗装していてABSパーツが割れた、ということは無かったと思い
ます。ただ、私はトイの塗装を落とすために模型用ラッカーシンナーでABSパーツを洗ったときに、パーツの抜き差し
をした後のジョイント穴部分がヤラレたことがありました。ABSパーツが模型用ラッカーシンナーに敏感、というコト
はあるようです。おそらくは先に述べたPSとエナメルシンナーの場合と同じ現象でしょうから、塗装の際には塗料を薄
めすぎない、というような注意は必要かもしれませんね。

 ……うわぁ、代表的なの二つだけでこの文章量。大丈夫かなぁ。皆さん最後までついてきてくれたかなぁ?私としては
これ以外の一般的でない樹脂のハナシのほうが役立つような気もするのですが、今回はここまでにしましょう。ウケが良
ければ続編をやりたいと思います。

 以上、星野のひとでした。
                                                                                         (H17.9.24)

ほしの・りしょう…モデラー。この世界も世代交代が激しいので、雑誌連載当時の「セ○チネル」に係わって
いたことを知っている人はもはや少数派と思われる。そーいえば同じ頃、某スケール物専門誌にも載ったこと
あるんですけど、知ってます?