星野塾





○模型工作によく使われる接着剤
 それでは、実際に模型工作で使われる接着剤をいくつか挙げてみましょう。(  )内に前回、「接着剤の種類」で分
類したどのタイプにあたるかを付記してあります。

・プラスチックモデル用接着剤(溶剤揮発型で部材溶解型)
 一般的なプラモデルの材料であるスチロール樹脂用、すなわちポリスチレンを溶かしてくっつける接着剤で、樹脂成分
が混ざったドロッとしたタイプと、溶剤成分だけのサラッとした低粘度流し込み接着タイプがあります。それぞれの使い
方については、模型雑誌や模型関連サイトなどいたるところで模型製作の基本中の基本として紹介されていますからここ
では書きませんが、この接着剤は硬化(この場合は溶剤が蒸発し切るまで乾燥させる、ということ)にはあせらず時間をか
けることが大切です。プラモの部品材料として多用されるようになってきたABS樹脂の接着については、その溶剤成分
の違いにより、接着できる製品とできない製品とがあるようです。近年使われるようになったリモネン系の「プラスチッ
クモデル用接着剤」で他の材質も含めて実験してみましたが(※ガイアノーツ「りもちゃん」を使用してポリスチレン、
ABS、アクリル、塩ビの4材質についてテスト)、リモネン系接着剤はポリスチレン以外は溶かさないためABS、ア
クリル、塩ビの3種の材質については同じ材質、異なる材質のどの組み合わせであっても接着することができませんでし
た。ポリスチレンとABS、ポリスチレンとアクリル、ポリスチレンと塩ビの組み合わせについては、溶けたポリスチレ
ンがもう一方の材質に思いのほか喰いついてくれるので、ある程度の接着力はあるようですが強い力を加えるとはがれて
しまいます。もちろんポリスチレン同士は強力に接着できます。

 以下はプラモ用接着剤ではないのですが、関連する内容なので…
 私は低粘度の流し込み接着剤として「サンアロー」という製品を使用しています。塗
料の空きビンに使用する分量を移しておき、細い面相筆にて流し込み接着に使っていま
すが、もともとはプラスチックコーティングされた金属パイプを自由に組んで作る「イ
レクター」という組立家具用の接着剤らしいです。ホームセンター等で手に入れられる
と思います。この接着剤の良いところは、ポリスチレン、ABS、アクリル、塩ビにつ
いては、同じ材質はもちろん、異なる材質のどの組み合わせであっても接着できる、と
いう点。つまり、この接着剤があれば、これらの材質別に専用接着剤を揃えなくてもい
いわけです。ただ、ここで紹介するかどうか、実はちょっと迷いました。便利な接着剤
ですが、反面、有機溶剤の臭いが相当にキツいからです。部屋の中でこぼしたりすると
それはそれはたいへんなことになります(←体験談)。当然、揮発したガスは体にたい
へんよろしくないでしょうから、成長期にある年少者は使わない方がいいでしょう。取
り扱い時は部屋の換気を十分に、もちろん火気厳禁でお願いします。

・木工用ボンド(溶剤揮発型で部材非溶解型)
 木材を接着することができます。(木材に対しては完全に接着したものをはがそうとする
と接着部分ではなく木材のほうが裂けてしまうほど強力な接着力があります。)紙の接着に
も使えます。また、溶剤揮発型といっても水性なので水で薄めることができ、ベースに地面
の砂などを固定するときに薄めたものをスポイトで垂らして使ったりします。(この使い方
をする場合はそのままでは弾かれてしまってうまく広がらないこともあるので中性洗剤を極
少量混ぜます。)模型そのものの工作ではなくディオラマを製作するときにお世話になるこ
との多い接着剤。

・瞬間接着剤(化学反応硬化型で一液型)
 略称は「瞬着」もしくは「瞬接」。プラスチック同士やプラスチック
と金属、金属パーツ同士を接着するときに使います。ABSパーツの接
着やガレージキットのウレタン樹脂製パーツの接着にも向いています。
低粘度のものは細かなディテール部分に流れ込んでパーツを台無しにす
ることがありますので普通の粘度のものが模型工作には使いやすいでし
ょう。少量付けて貼り合わせると、空気中の微細な水分と反応して極め
て短い時間で硬化します。(硬化速度は粘度が低いものほど早いようで
す。)私は小さなディテールパーツの接着以外は、合わせ目消し処理の
必要なポリスチレンパーツの接着もスチロール樹脂用接着剤ではなく、


この瞬間接着剤を使用しています。スプレー式の硬化促進剤(注↓)が一般に流通するようになってからは、セットで使 うことで作業効率がアップしました。高粘度の、いわゆる「ゼリー瞬着」と呼ばれるものは削り込みたいパーツの裏打ち や、スクラッチでプラ板箱組みをしたときに裏側を補強するのに便利です。パテ代わりに使用することもできますが、硬 化後かなり硬くなるのでヤスリ掛けで平滑面を出すときに周りの材質のほうが削れすぎてしまった、なんてことのないよ うにしましょう。  注意すべき点もいくつか。まず衝撃に弱い傾向があるということ。接着力そのものはかなり強力ですが、衝撃を加える と驚くほど簡単にはがれてしまうことがあります。硬化する時に(硬化促進剤を使用した場合は特に)ガスが発生するこ とがありますから、接着硬化中は顔を近づけてパーツをのぞき込んだりしないように。誤って衣服にたらすと急激に発熱 してヤケドをすることもあるので、これも要注意です。プラスチックや金属だけでなく人間の皮膚も強力に接着しますか ら十分気をつけてください。また、私の経験から得た結論ですが、「安物はやっぱりダメ」です。接着剤専門メーカーの 製品か、模型専用と書かれた製品がよいでしょう。私はウェーブの高強度タイプを愛用。  注:これを瞬間接着剤に吹き付けると直ちに硬化が始まります。パーツ接着後に接着部分に軽く吹き付けたり、    片方のパーツに瞬間接着剤を付け、もう片方のパーツには硬化促進剤スプレーを吹き付けておいてすぐに    貼り合わせる、というような使い方をします。プラスチックそのものや塗装面を侵すことがあるので使用時、    特に吹き付け過ぎには注意。 ・エポキシ接着剤(化学反応硬化型で二液混合型)  詳しくは「星野塾#5」エポキシ樹脂の項を参照してください。揮発型接着剤で接着できないプラスチックやプラスチ ックとプラスチック以外の材質(金属等)を接着したいときなどに使います。「くっちゃね.com」内、店員佐トちゃ んのブログ「佐ト部屋」でも実際にキット製作に使用したときの例が詳しく紹介されていますので、こちらも参考にする とよろしいかと。硬化後、経年変化で黄ばんでしまうことが多いので、接着部分が目立たないような使い方、あるいは見 えなくなるような使い方がよいと思います。
・ホットメルト(熱変化型)
 「縁の下の力持ち」的にもっと活用できそうな接着剤なので取
り上げておきます。家庭用には、ピストル型の加熱器(グルーガ
ン)にセットして使うタイプがあります。ロウソクのような棒状
の接着剤を入れて引き金を引くと銃口部分から熱せられて軟らか
くなった接着剤が出てきますので熱いうちに接着し、冷めて硬化
するのを待つ、というものです。凸凹部分の接着に強く、接着力
も強いので手芸ではよく使われているようです。身近なものでは、
ビンのラベルとか、本(背表紙の接着してある部分)に同じタイ
プの接着剤が使用されていますね。熱に弱い材質であるプラモデ
ルの製作に直接使うことはちょっとためらわれますが、プラスチ
ック以外の材質を使うことの多いディオラマでは役立ちそう。


 パソコンでのデジタル写真合成がまだ不可能だった頃、模型雑誌でモビルスーツが飛んでいる特撮写真を撮るときには、 空や宇宙のスライド写真をバックに死角から支柱で作品を支えて撮影していたのですが、撮影の間だけ作品と支柱を一時 的にこのホットメルトで(強引に)接着していた覚えがあります。 ・両面テープ  接着剤ではありませんが、同じ用途なので。後で頻繁にさわったり、力が掛かったりする部分でなければ、塗装面を汚 さないようにパーツを後付けしたい場合にたいへん重宝します。私の模型誌ゾイド作例では、クリアーパーツやキャノピ ーは、ピンなどを削って塗装後にパーツを取り付けられるようにしておいてから、パーツの接する部分に薄くて透明度の 高いタイプの両面テープをハサミで細く切って貼り、固定しています。また、飾り台に面積の広いシート状のもの(例え ば情景用の芝シート等)を貼り付けるときにも使えます。  最後にくどいようですが、やはり書いておきましょう。「接着剤を使うときは換気をよくする」「火気のあるところで は使用しない」「皮膚に付着したときはすぐに洗い落とす」「舐めたり口に入れたりしない」等、説明書に書いてある基 本的な注意事項を守ることも大切です。  以上、星野のひとでした。                                             (H18.12.29 )